こだわりのロゴができるまで
ロゴの意味

ロゴから伝わってくる印象、ってすごく大きいですよね。ロゴは、お店や企業、サービスのイメージを感覚的に伝えるものとして、最も拠り所となる大切なものです。好感を持ったり、信頼を感じたり、スタイリッシュな印象を受けたりと、意識的にも無意識的にも訴えかけるものがあって、それを見る人にも、またサービスを提供する側にもそれがあることによって常に原点に還っていけるような力があります。
現在の実質前身となっているジャンバ・ジャパン社時代(cf. 前blog「イタリアの“フェスタ”はホームパーティー」)、オペレーションを一任されてから一番先にとりくんだのは、そのような理由で、ロゴを刷新することでした。ロゴデザインに関する本を手当たり次第図書館で借りたり買ったりしては読んで、その奥の深さに毎回感銘を受けては、当初想定していた、「ロゴを自分で作ってみる」のは無謀らしいという結論に達しました。
要は、ロゴというものはその事業のコンセプトをスッキリと視覚的に一瞬で訴求するものでなくてはいけないらしい。ということをその時初めて概念として自覚したのです。ロゴよりも先にコンセプトを明確にする必要があり、それを具現化(ロゴに)するのはスキルと経験が必要らしい、ということを。(今文字にして書いてみると至極当たり前のことなのですが)
ロゴのモチーフを考える
当時の社長はイタリア人。当然イタリアの文化は彼にとって当たり前なのですが、日本人の私としては、「そこがイタリアらしくておもしろい!」という部分の食い違いがありました。(たとえば、お昼休みに必ずビールを飲むことや、仕事が立て込んでいてもお昼休みは死守すること、食事の後はエスプレッソがなくてはいられないこと、etc.)
最初、私はその文化の違いに光をあてて、日本とイタリアのほんの少しの架け橋になることを願い、また実際イタリアにはたくさんの美しく有名な橋があることから、橋(ponte)をモチーフにしたロゴはどうかと考えました。

(イタリアには観光地にも本当にたくさんの美しく有名な橋があるのでまた別のblog で書きたいと思います。)
が、お店のモチーフとして存在意義を一言で伝えることを考えると、少し、私の中では大きく出すぎな感がありました。最終的な形としては、人と人をつなぐ架け橋になりたいけれど、そこをつくりあげる要素として、もっと親密で、人の手を感じるものをひとつひとつ紡いでいくことを大切にしたい。
そもそもフリゼリーノをお取り扱いしようと決めたのは、イタリアのスタイリッシュな商品ならなんでもよかったわけではなく、アブルッツィの地方の伝統的な革製品の家族経営の工房で職人(アルチザン)の手でつくられているオリジナリティーある商品が、伝統と革新の融合性という点で非常におもしろいと感じたためです。

そして、この瞬間に、ロゴのモチーフを、「イタリアの工房にしよう」と思い立ちました。工房で、職人の手を経ているものであることも視覚的に伝えるために、「手書きのイラストにしてもらおう」とも。
実はその前にも、イタリアらしいスタイリッシュさを求め、それだけでも素敵なフォントですっきりとしたロゴにならないか、試行錯誤していた時期がありました。でもどうにもこうにも「これだ!」というものに行きつきません。なんとなく、美しすぎてしまって、小さなお店独自のオリジナリティとしての本質を伝えられてるような気がしなかったというのが理由でした。

ロゴ制作を依頼する

さっそく、ロゴデザインをしていただくデザイナーさんを探そうと思い、いろいろ検索をしていく中で、フリーで活躍しているデザイナーさんに直接お願いできる「ココナラ」というサービスを利用することにしました。(https://coconala.com/)
デザイナーさんの過去実績が閲覧でき、デザイナーさんの個性や感性もわかるようになっているので、特に誰にお願いしようかと考える時間もわくわくしました。その中で、洗練&ぬくもり具合が絶妙にバランスがとれて素敵だった、COMMON DESIGNさんにお願いすることにしました。
まず、「イタリアの小さな工房めぐり(著:大矢麻里/新潮社)」という本を借りてきて、イタリアの工房について調べてみました。すると、工房外観はそれぞれにユニークで、「これぞ、イタリアの工房!」というステレオタイプがあるわけではなさそうです。そのため、一般的にイメージするおうちのような形とは違うようだ。ということがわかってきました。
当時は、「空間を華やかに飾るインテリア的なものとして楽しんでほしい」というメーカーの意図をくみ、おうちの中で使っていただくことを想定していたため、インテリアのイメージとしてもおうち型がマッチしているという感覚があったこともあります。しかし、工房とはもっと職人気質で質実剛健なイメージへと私の認識も変わっていきました。
そこで、全体の外観をモチーフとすることをやめ、すべての工房に(そしておうちにも)ある「扉」にフォーカスしようと思いました。扉はすべての入り口です。工房自体は親密で密接な空間ながら、扉を開ければ、別の空間にいくことができます。また、その空間に入るときにも必ず扉は必要です。扉は新しい世界を開いてくれます。

ということで、こちらの工房(トスカーナ州ピサ県のヴォルテッラにあるエトルリア様式のジュエリー工房“fabulaetrusca”)の写真をイメージとしてお送りしてラフ案を作っていただきました。
当初、この工房のイラストの周りに、「工房から日本へお届けする」という意味をこめて、また、ローマ時代に象徴的な意味で多様されたモチーフであるリーフをあしらってもらえたらという要望を出したのですが、「要素が多すぎてごちゃごちゃしてしまう」というアドバイスを受けて、そちらは削ぎおとしました。つい伝えたいことが多くなって盛り込んでしまいがちですが、イメージを明確に訴求するためには、伝えたいことをしぼってシンプルにすることがロゴとして重要なようです。この点は、どうしてもデザインの勉強をしていないと難しい部分なので、デザイナーさんに意見を言っていただいてよかったなと思っています。


その代わりに、アルファベットをあしらったイラスト案を多くだしていただきました。工房のイラストは正面と斜めと2種類作っていただきましたが、斜めの方を採用しました。
ちなみに、キャッチフレーズの“vivi con stile una bella vita”は、当時のイタリア人社長が考えたもので、「スタイルを持って素晴らしい人生を生きましょう。」というなんとも洒脱なセンテンスです。今のイタリアンモダンセレクトでも生き続けている大切なクレドになります。ですが、当時はロゴに入れこむと少し堅苦しいかなと感じ、最終的に、一番左下のロゴに、「イタリアの工房から直輸入」という単刀直入なセンテンスを入れていただき、色味や文字も後から改変できるようにaiデータで納品いただきました。
現在のロゴへ
そしてその後、現在の形で再出発する際に、「GJ」を、「ITALIAN MODERN SELECT」と変えてロゴとして採用しています。ロゴを目にしたときのほっとする感覚とわくわくする感覚のバランスが気に入っていて、いつもお仕事を見守ってくれているような存在です。
そんなロゴをプリントしたショップカードも、さりげなく商品に同梱させていただきます。

そして…、ロゴ不採用となってしまったあの、“vivi con stile una bella vita”は、スタンプとなって、段ボールに刻印して皆様の元にお届けいたします。

イタリアの工房から、職人の手を経た工芸品を、日常を彩る1ピースとして楽しんでご愛用いただければ幸いです。
(Catch Image: Rhamely from Unsplash)